THE・宝塚歌劇の絢爛演出
豪華絢爛なショーやレヴューは、宝塚歌劇の代名詞。
今回は、幻想的なレビューやゴージャスなショーで人気の演出家、稲葉太地先生について解説します!
稲葉太地先生の歴史と逸話
稲葉太地先生は、2000年に宝塚歌劇団に入団後、演出助手の期間を経て2006年にバウホール公演『Appartement Cinéma』で演出家デビューを果たします。
2009年にドラマシティ公演『SAUDADE』で初めてショー作品を手がけ、詩的な芝居要素を加えた演出で注目を集めました。
2010年に『Carnevale睡夢』で大劇場演出家デビュー。
大劇場デビュー後早々に注目のショー作家として話題となり、以降数々のショーやレビューを手がけます。
2011年にエキゾチックで蠱惑的なレビュー『ルナロッサ』、2012年にグルーヴ感溢れる現代的なショー『Celebrity』、2013年に「ダンスの花組」の魅力を詰め込んだショー『Mr. Swing!』、2014年にブラジルの国技、カポエイラを取り入れた迫力のラテン・ショー『パッショネイト宝塚!』といった意欲作を次々と発表し、人気を集めてきました。
2015年には大劇場公演兼台湾公演の演目として、レビュー『宝塚幻想曲』を花組にて上演。
劇団きっての大人気トップスター・明日海りおの初めての主演ショー作品として手がけ、幻想的で美しい演出で好評を博し、男役黒燕尾のフィナーレナンバーでは宝塚歌劇団年度賞・団体賞に輝く圧巻の名場面となりました。
勢いは止まることなく、同じく2015年ににカーニバル形式のショー『GOLDEN JAZZ』を月組にて上演、名ダンサーとして名高い当時のトップ娘役・愛希れいかを芯としたエネルギッシュなアフリカンダンスの場面がまたもや宝塚歌劇団年度賞・団体賞に輝き、ショー作家として高い評価を確立していきます。
翌年2016年には、トリデンテの人気が絶頂にあった雪組に当て書きしたショー『Greatest HITS!』、2017年には、日本初のレヴュー『モン・パリ』誕生90周年記念公演として発表した新作レビュー『カルーセル輪舞曲』を新トップスター・珠城りょうのお披露目公演として上演。
そして、同じく2017年には当時の宙組トップスター・朝夏まなとのサヨナラ公演となるレビュー『クラシカル ビジュー』、2019年には花組トップスター・明日海りおのサヨナラ公演となるレビュー『シャルム!』を手がけるなど、ここ最近ではトップスターの退団公演を手がける大役を担っています。
稲葉太地先生演出の特徴
生徒一人一人の長所を伸ばし、美点を最大限に活かした適材適所な演出が稲葉太地先生の最大の特徴です。
例えば、ダンサータイプのスターにはダンスシーンで見せ場を作り、身体能力がとことん高いスターにはアクロバティックな場面を与え、歌唱力に定評のある生徒にはソロナンバーを与え、確実且つ堅実な演出で客席を沸かせることができる演出家です。
また、技術面だけでなくヴィジュアル面に関しても、スターが最も美しく輝くように意識した演出が垣間見られます。
例えば、男役でありながらも中性的な美貌が際立つトップスターには花魁の扮装で妖艶に歌う場面を作ったり、都会的で大人の色気を持つ男役にはスーツとハットでキメる場面を与えます。
抜群のスタイルと美脚を持つトップ娘役にはダルマの衣装やミニスカートでとことん美脚をアピールさせたり、砂糖菓子のような可憐さを持つキュート系の娘役には、ペールトーンのドレスを着せアイドル要素を含んだキャラクターを与えるなど…。
一人一人の個性を活かした演出がとにかく上手な演出家です。
稲葉太地先生の代表作
数々の良作を毎年のように発表している稲葉太地先生。
どの作品も適材適所の演出で、スターの輝きを存分に感じることのできる完成度の高い作品ですが、代表作を選ぶとしたら、やはり2015年の花組公演『宝塚幻想曲』でしょうか。
新生花組の門出となる作品であり稀代のトップスター・明日海りおのトップ就任後初となるショー作品、そして台湾公演で上演する演目という様々な要素が合わさり、稲葉太地先生の強い意気込みを随所から感じられる作品です。
特に、宝塚歌劇団年度賞・団体賞に輝いたフィナーレナンバー「さくら幻想曲」の場面は、圧巻の演出です。
和楽器でロック調にアレンジした名曲「さくらさくら」をバックに、娘役とのデュエットを挟みながら大階段を使った男役の黒燕尾ナンバーは、ほとばしる熱気で観客を魅了しました。
宝塚のショーやレビューにおいて大階段を使った男役の黒燕尾ナンバーは定番の演出ですが、あんなにも変化に富んだフォーメーションで、激しく濃い振り付けを長い時間踊り尽くす演出は、前代未聞と言えるでしょう。
まとめ
生徒一人一人の長所を活かし、舞台上で最大限に輝けるような場面を生み出す稲葉太地先生の演出は、まるで魔法のようです。
宝塚歌劇への愛情と、生徒への深い思いやり、純度の高い観察力があってこそ成せる技と言えるでしょう。
次回は一体どんな作品で夢を見せてくれるのか、益々今後が楽しみです!
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