宝塚歌劇団には個性豊かな座付き演出家が複数存在し、夢舞台に相応しい物語やレビューを創り出しています。
この記事ではベールに包まれた花園、宝塚歌劇団の演出家の実態について迫っていきます!
宝塚歌劇団演出家の役割
宝塚歌劇における演出家は劇作家と演出家を兼任します。
なので、脚本を書き上げる役割と、生徒への演技指導、舞台製作にあたっての総指揮を執る役割を担います。
脚本に関してはオリジナルでゼロから作り上げる手法や、原作のある題材を宝塚歌劇仕様に潤色する手法があります。
また、演出家としてはキャスティングや演技指導はもちろんのこと、舞台美術、衣装、音楽、照明など舞台上の演出に関わる全てにおいて、演出家が指揮を執る必要があります。
自分が生み出した作品を上演するにあたり、責任を持って創り上げることが求められるのです。
演出家になるための方法
宝塚歌劇団の演出家を目指す場合、先ずは演出助手として入団を果たす必要があります。
少し前までは、欠員があると宝塚歌劇団の公式HPや演劇関連誌で演出助手の求人を掲載していました。
しかし、ここ最近だと求人をかける際はマイナビサイトにて募集をかけているようです。倍率はマチマチですが、なんと100倍を超える時もあったとか!
直近で募集した際の応募条件は、4年生大学卒業もしくは大学院修了見込の新卒・第2新卒の場合は既卒5年以内という制限をつけた上での募集でした。
数年に一度、求人がかかるかどうかなので、小まめに確認する必要がありますね。
演出助手として下積み生活を送り、舞台の流れを一通り覚えていったら徐々に新人公演の演出を担当できるようになります。
その後、若手中心で上演するバウホール公演の作品を演出できるようになり、小劇場公演で結果を出し評価を確立した後、ようやく大劇場公演で演出家デビューを果たせます。
宝塚歌劇団の著名な演出家
植田景子 先生
10歳から宝塚歌劇の大ファンだった植田景子先生は、高校時代に演劇部で部長を務め宝塚歌劇の演目を上演する程、子供の頃から宝塚と演劇の世界に浸かっていました。
神戸女学院大学文学部在学中に宝塚歌劇の演出家を目指す決意を固めます。しかし、新卒採用のチャンスでは敢えなく不合格に。大学卒業後に上京し、プロの演出家の元で3年間修行した後、演出家として舞台を学ぶ為にニューヨークやロンドンに留学します。
宝塚歌劇の演出家になりたい一心で、演出助手の求人に何度も応募し、1993年に5回目の応募で晴れて演出助手として入団を果たします。
険しい道のりを乗り越え見事に入団を果たした植田景子先生は、1998年にバウホール公演『Icarus』で演出家デビューを果たし、2000年に『―夢と孤独の果てに―ルードヴィヒII世』で大劇場公演デビューを果たします。
植田景子先生の入団以前は宝塚歌劇団に女性の演出家がおらず、史上初の女性演出家となりました。宝塚歌劇団における女性演出家の草分け的存在で、女性の視点ならではの繊細な美しさが漂う幻想的な演出が特徴です。
上田久美子 先生
2006年に演出助手として入団後、2013年にバウホール公演『月雲の皇子 -衣通姫伝説より-』で演出家デビューを果すもこの作品が大好評を博し、デビュー作にも関わらず急遽続演となった異例を持つ上田久美子先生。
デビュー以降もオリジナル作品を中心にヒットを飛ばしている大人気の新進演出家です。上田久美子先生を簡潔に表現すると、異色の経歴の持ち主です。
京都大学文学部出身の才女で、新卒で製薬会社に入社し2年間会社員生活を送ります。毎日同じ作業の繰り返しである会社員生活に嫌気が差して転職を考えていた頃に、ちょうど宝塚歌劇の演出助手の求人を見つけ応募、見事入団を果たします。
宝塚歌劇の座付き演出家は、学生時代から演劇の世界に傾倒し演出家を志してきたタイプや、宝塚歌劇に心酔し何度も入団試験を受け、念願叶って入団を果たしたタイプが中心の中、入団の動悸からして異例と言えます。
しかし、感動的なオリジナル作品を0から作り出す才能は劇団屈指であり突出しています。宝塚歌劇の演出家は、芝居作家かショー作家で棲み分けられている傾向にありますが、上田久美子先生はデビューが2013年と最近であるにも関わらず、既に芝居作品でもショー作品でもヒット作を生み出しており、異例の快進撃を続けています。
2015年の大劇場デビュー作『星逢一夜』は読売演劇大賞の優秀演出家賞に輝きました。デビュー作でこれだけ大きな賞を受賞し、高い評価と人気を確立している演出家は前代未聞と言えるでしょう。
宝塚歌劇団の演出家を目指すにあたって求められる能力
直近で演出助手の募集がかかった際に、「求められる能力」として具体的に下記5点の内容が掲載されていました。
- コミュニケーション能力
- 調整力、スケジュール管理能力
- 段取りよく物事を進める能力、フットワークの軽さ
- 忍耐力、我慢強さ
- (脚本を書く際には)創作力、構想力、文章力
これを見ると、ガッツや根性にやや重きを置いているように見受けられますね。
晴れて宝塚歌劇団に入団できたとしても、いきなり演出家デビューができるわけではなく、入団後数年間は演出助手として細々とした雑用などの下積み生活が続きます。
業務で多忙を極める中、自ら時間を作り脚本や企画書を作成し、劇団に認められないと中々次のステップに進めないのだとか。それを考えると、必然的に忍耐力や継続力が求められるということですね。
まとめ
華麗なる宝塚歌劇の仕掛け人と言うべき多才な演出家たち。
宝塚歌劇は舞台に立つスターの情熱のみではなく、演出家の作品に対する意気込みや情熱があってこそ、成り立っていることがよくわかります。たまには、夢舞台の裏側に想いを馳せて観劇してみるのもいいかもしれません。
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