ノスタルジックな演出が美しい…
2013年に演出家デビューしてから全ての作品で人気を博し、今や劇団屈指の名出家の一人として高い評価を確立している上田久美子先生。
宝塚歌劇団の演出家の中でも、特に人気のある演出家の一人です。
快進撃を飛ばし続ける上田久美子先生について、
・演出の特徴
・代表作
について解説していきます!
上田久美子先生の歴史
上田久美子先生は、宝塚歌劇団演出家の中でも異色の経歴の持ち主です。
会社員生活を経て、宝塚歌劇団の演出家に転身
宝塚歌劇団の演出家と比較し、異色の経歴を持つ上田久美子先生。
京都大学文学部卒業の才女で、大学卒業後は製薬会社にて2年間に渡り会社員生活をご経験されています。
会社員時代は、単調な毎日の繰り返しに嫌気が差していたようですが、後のインタビューでこの社会経験が演出家としておおいに役に立っているとお話されています。
新卒で入社した会社員生活に見切りを付けようと転職活動を始めた頃に、宝塚歌劇の演出助手の求人を見つけ応募、高い倍率をくぐり抜け2006年に見事入団を果たします。
演出家デビューから異例のヒットを連発
演出助手の期間を経て、2013年に月組バウホール公演『月雲の皇子』で演出家デビュー。
衣通姫伝説を元に、主演の珠城りょう、ヒロインの咲妃みゆ、恋敵役の鳳月杏の絶妙な三角関係に焦点を当て描かれたこの作品は、演出家デビュー作にも関わらず大好評を博し異例の続演を果たしました。
翌年2014年に、宙組で『翼ある人びと』をシアタードラマシティ公演として上演。
当時2番手だった朝夏まなとの出世作となったこの作品は、第18回鶴屋南北戯曲賞の最終候補にまで残った程、外部からも高い評価を得ました。演出家デビューからわずか2作目であるにも関わらず、期待の新進演出家として多方面から注目を集めていたことが伺えます。
そして、2015年に雪組公演『星逢一夜』で待望の大劇場演出家デビューを果たします。
芝居巧者のトリデンテ、早霧せいなと咲妃みゆ、望海風斗が織りなす日本物特有の心の機微、切なさが描かれたこの作品は、客席の至る所ですすり泣きが聞こえ、感動必至の名作となりました。
上田久美子先生は緻密な演出が光るこの作品で、第23回読売演劇大賞・優秀演出家賞を受賞します。大好評を博した『星逢一夜』はその後再演希望の声が多く寄せられ、2017年に再演を果たしました。
サヨナラ公演の演出、そして大劇場作品ショー作家デビュー
デビュー早々に人気演出家の仲間入りを果たした上田久美子先生。
演出家として責任重大なトップのサヨナラ公演の演出を手がけていくようになります。
2016年には、花組公演『金色の砂漠』を上演。
トップ娘役の花乃まりあのサヨナラ公演となったこの作品で、美形トップスターの明日海りおが奴隷役に扮する大胆な設定は大きな話題を呼びました。
熱砂の中で繰り広げられる狂おしく激しい愛憎劇は、ドラマティックで好評を博しました。
また、物語の延長線で繰り広げられるフィナーレのデュエットダンスは、名場面の一つに。
2017年には宙組公演『神々の土地』を当時のトップスター、朝夏まなとのサヨナラ公演として上演。
『翼ある人びと』のコンビ同様、ヒロインには美貌の娘役、伶美うららを配役し、ロシア革命前夜のロマノフ王朝の黄昏を美しい絵画のように描写しました。歴史物としても非常に完成度が高く、観る者を唸らせました。
演出家デビューからわずか5年で、オリジナルの芝居作品全てを成功に導いてきた上田久美子先生ですが、2018年には月組公演『BADDY(バッディ) -悪党(ヤツ)は月からやって来る-』で大劇場作品のショー作家として演出を手がけます。
ストーリー仕立てとなっているこのショーは、ほとんどのキャラクターが通し役という斬新な構成が光ります。
大劇場公演の定番であるロケットの場面では、トップ娘役の愛希れいかを筆頭に実力派の娘役たちが全力で怒りを表現する演出で、これまでのロケットに対する固定観念を覆すような、初めて観る圧巻のロケットとなりました。
羽根を背負ったパレードの場面すら、ストーリーの延長で繰り広げられる新しいタイプのショーとして上演し、大きな話題を呼びました。
上田久美子先生演出の特徴
複雑に交じり合った人間関係、登場人物の心の機微を無駄のない構成で魅せる演出に長けています。
物語をベストな状態でまとめ、ダイレクトに心の琴線に触れてくる、それでいながら観客に深い余韻を感じさせる緻密な演出が光る方です。
『星逢一夜』や『月雲の皇子』、『翼ある人びと』のような切なくも美しい三角関係は、上田久美子先生の得意とする分野でしょう。
また、海外ミュージカルの潤色や映画、漫画の舞台化など、宝塚歌劇の人気演目は原作ありきの傾向が強い中、オリジナル作品として物語を生み出せる独創性も、上田久美子先生の大きな強みと言えるでしょう。
上田久美子先生演出の代表作
上演作品全てが名作と名高い上田久美子先生ですが、代表作を選ぶとしたら『星逢一夜』でしょう。素朴な日本の情景が心に染み入る演出に加え、トリデンテ3人の熱演が胸を打ち、物語のラストでは劇場いっぱいにすすり泣きが響き渡りました。幕が閉じた後も席で涙を拭い続けている宝塚ファンが多く見受けられましたね。上田久美子先生の読売演劇大賞・優秀演出家賞の受賞は、劇場中が感涙に包み込まれた作品の功績、演出家としての確かな手腕があったからこその当然の評価と言えるでしょう。
まとめ
新作オリジナル作品を次から次へと生み出し、成功に導き観る者に深い感動を与え続けている上田久美子先生。
宝塚ファンからの支持だけでなく、生徒たちからも「上田先生の作品に出たい!!」と熱望されるほど、名演出家としての評価を短い期間で確立させた稀有な存在です。
次の作品ではどんな世界を見せてくれるのか、期待が高まります!
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